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横浜地方裁判所 昭和60年(ワ)2676号 判決 1986年1月31日

横浜市<以下省略>

原告

右訴訟代理人弁護士

石戸谷豊

東京都新宿区<以下省略>

被告

興栄物産株式会社

右代表者代表取締役

Y1

厚木市<以下省略>

被告

Y1

主文

一  被告らは、各自、原告に対し金五七〇万円及びうち金五四〇万円に対する昭和六〇年一〇月一日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は被告らの負担とする。

四  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

一  原告は、「1被告らは、各自、原告に対し、金五九四万円及びうち金五四〇万円に対する昭和六〇年一〇月一日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。2訴訟費用は被告らの負担とする。」との判決並びに第一項につき仮執行の宣言を求め、請求の原因として、

1  被告興栄物産株式会社(以下「被告会社」という。)は香港商品取引所における商品売買取引の媒介、取次ぎ等を目的とする旨称している会社であり、被告Y1(以下「被告Y1」という。)は同会社の代表取締役で同会社の業務一切を統括する立場にある。

2  被告Y1は、被告会社の代表取締役として被告会社において香港商品取引所における売買取引を媒介、取次ぎ等をする意思も能力もないのにあたかもこれを行うかの如く装い、原告から右取引媒介等の委託証拠金名下に金員を騙取しようと企て、昭和五九年一二月四日ころ被告会社の従業員A及びBをして原告に対し「一〇〇万円で三〇万円から四〇万円の利益が間違いない取引がある。大豆は今底値なのでその程度の利益は確実だ」等と虚偽の事実を申し向け、原告において被告会社が右売買取引を媒介、取次ぐものであり、かつ、被告会社に右取引の媒介等を委託することにより前記程度の利益を得ることができる旨誤信させ、同月五日ころ原告から右取引の委託証拠金名下に金二〇万円の交付を受けてこれを騙取し、さらにその後も右A等被告会社の従業員をして右誤信に陥っている原告から委託証拠金(追証拠金)名下に、同月一二日ころ金一〇〇万円、同月末日ころ金一二〇万円、昭和六〇年七月五日ころ、同月九日ころ及び同月三〇日ころそれぞれ金一〇〇万円を交付させて、いずれもこれを騙取した。

3  原告は、被告らの右不法行為により金五四〇万円の損害を蒙ったが、これが損害の回復には弁護士に依頼して訴を提起する以外に適当な方法はない。そこで原告は本訴代理人を訴訟代理人に選任し訴を提起したが、その際右代理人に対し報酬等として金五四万円を支払う約定をした。右金員も被告らの前記不法行為による損害である。

4  よって、原告は被告ら各自に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき金五九四万円及びうち金五四〇万円に対する不法行為の後である昭和六〇年一〇月一日以降完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

と述べた。

二  被告らは、適式の呼出を受けながら、本件口頭弁論期日に出頭しないし、答弁書その他の準備書面も提出しないから、請求原因事実を自白したものとみなす。

三  右事実によれば、原告が被告らから騙取された金員五四〇万円を同人らの不法行為による損害として請求することは相当として認容することができるが、弁護士費用については、本件事案の性質上原告としては弁護士を訴訟代理人として依頼し訴を提起せざるを得ないことは認め得るものの、本件不法行為と相当因果関係にある損害としての弁護士費用は、被害額、被告らの応訴の態度等諸般の事情から勘案すると金三〇万円が相当であると認められる。

四  以上の次第で、原告の本訴請求は、被告らに対し各自金五七〇万円及びうち金五四〇万円に対する不法行為の後である昭和六〇年一〇月一日以降完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容することとし、その余は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条但書、九三条一項本文を、仮執行の宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 安國種彦 裁判官 山野井勇作 裁判官 小池喜彦)

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